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谷人の心象images of Tanibito those who have lived in Aso region, Japan This page's last update: Sep/27/2010 阿蘇たにびと博物館は、阿蘇とアジアの知るを楽しむミュゼです。 Aso tanibito ecomusee is an ecomuseum in Japan to appreciate Aso and Asia. 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年 谷人メール ギャラリー(英語) 「谷人メール」は、谷人友の会の会員さん宛てに、当館から毎月お送りしている情報メールで、 毎回梶原宏之学芸員による阿蘇とアジアに関するエッセイを日本語で掲載しています。そのバックナンバーをご紹介します (無断転載は禁じますが、出典を明記した引用は歓迎します。)。 化学反応と熊本人 (谷人メール40号、2010年9月24日、『谷人』16号収録予定) 長いあいだ続いた封建的な時代がようやく終わり、新しい時代を迎え ようと変わりゆく中で、思ったほど自分たちは新体制から優遇されてい ないと感じるメンバーに不穏な動きが起こり、やがて体格のいいずっし りとしたリーダーを立てて反旗を翻す。しかし圧倒的な戦力の差により、 結局勝利したのはカン軍だった。今回の日本の民主党代表選の話である が、なんだか西南戦争のことが思い出された。 九州新幹線が全線開業するのは来春のことだが、九州では色々と悶着 が起きている。JR九州が開業を盛り上げようと九州各駅に設置してい る西郷隆盛のカウントダウン看板だが、熊本だけが「西郷は熊本にふさわ しくない」と反対の抗議運動を起 こして除幕式ができないでいる(西日本新聞2010年9月19日他)。なんと も大人気ない話であるが、熊本人は西郷家が元々熊本の出であることは 知らないのだろうか。鹿児島人は博多駅で西郷と大久保利通のコスプレ 2人(市役所職員)が協力してちらしを配っているというのに。なるほど 西郷にとって田原坂は今も越すに越せないようである。 反対運動を起こしている熊本人たちが推薦している人物をみると、加 藤清正に宮本武蔵、夏目漱石らがいいらしいのだが(熊本日日新聞9月 22日)、どれもみな熊本の人でなく、九州の人でさえない。よその人はよくて西郷は駄目とい う熊本人の恣意性は甚だしく、そんな狭い了見を全国にアピールしてし まって大丈夫だろうか。観光客はきな臭い熊本を避け、若い人もあきれ て益々外に出るのではなかろうか。阿蘇も「スローな阿蘇」と観光PR を絡めているが、新幹線を機に「ストローな阿蘇」にならないか心配で ある。JRが西郷看板の着物を誤って左前に描いたのを笑う熊本人がい るが、熊本空港で大きく紹介されている宮本武蔵の字も堂々と間違っ ている。まあその辺りは笑い話にできたとしても、熊本人は遠くのもの はともかく、近づいてくるものとの反応にはおよそ慣れていない。 熊本空港が「阿蘇くまもと空港」の愛称を唱え始めたのは2006年から で、それでも阿蘇と空港は変わらず近くて遠い存在だったが(空港は南 阿蘇のすぐ隣なのに、南阿蘇へ向かうバスが1本もなく、わざわざ一旦 熊本市内へ出なければならなかった)、最近ようやく南阿蘇から空港を 経由して市内に向かえるバスが現れた。1日4便しかないため飛行機には なかなか時間があわないが、それでも有難いことである。空港を過ぎる と、次のバス停を告げる車内アナウンスがタレントのスザンヌさんのも のに変わる。彼女はいまや熊本県の宣伝部長として、経済効果は12億円 ともいうから大したものだ。車内アナウンスの感じもなかなかいい。 空港に愛称をつける動きは近年の傾向であり、全国に20以上あるそう だが、最初に人物名をつけたのは「高知龍馬空港」(2003年)だろう。 薩長同盟の立役者とされる坂本龍馬は大河ドラマでも人気だが、龍馬役 の福山雅治さんは九州の人だ。長崎での撮影の際、自分の地元なのに土 佐弁で喋るのは違和感があったという話は面白いが、彼も含めて九州は 昔から人気芸能人を多く輩出する島である。JRもいっそ、スザンヌさ んや福山さんら九州の芸能人たちに肩を組ませた看板にしてみてはどう だろう。熊本人としては龍馬の「異なるものを見事に化合させる術」を 見習いたい。 もうひとつ最近気になるニュースがあった。熊本市現代美術館が高知 県香南市から借用していた幕末の絵師・金蔵の屏風絵(高知県指定文化 財)を、燻蒸ミスでかなり変色させてしまったのだ(高知新聞9月16日)。 リン化アルミニウムという特定毒物を用いると顔料の銅などと化学反応 を起こして黒変させてしまうため、燻蒸に用いてはならないことは専門 学芸員ならば常識と思うが、市美術館の学芸員はこのチェックを怠った のみか運送業者に丸投げして関知していなかった。大切に保管してきた 土佐の方々には本当に気の毒であり、この事件で熊本市美の信頼も地に 落ちてしまったが、化学反応への熊本人の不得手もこうなると笑えない 話である。 * 梶原 宏之(阿蘇たにびと博物館学芸員) 目次にもどる |